Extra3:諦めないことを選んだ

久しぶりに立ち寄ったグリダニアでは、星芒祭の準備が進んでいた。
もうそんな時期か…と見て回っているとちょっとした違和感を感じた。
“これ、エッグハントのたまご…?”
“やっぱりそう思うかい、お姉さん”
“えぇ…お爺さんも?”
“もちろん。毎年見ているのにすごい違和感を感じたからね。
どうもあちらこちらで間違った装飾が見られているらしく、実行委員の皆や子供たちが挙って手直しをしているみたいなんだ”
“なるほど…”
そんな話をしながら通った道は、確かに違和感満載だった。
“それで手伝っていたと”
“あぁ、用事もなかったからねぇ”
“あんたはいつまで経ってもお人好しだな”
“そう言いながら手伝ってるお前もお人好しだと思うのだが?”
“……”
双蛇党に寄ったついでにと私より先に手伝いに参加していたのが、弟のヘリオ。
根っこが根っこだなと思いつつ、彼も真面目に手伝いをしていた。
星型のプレゼントボックスを互いに確認しては別エリアの手伝いをして…終わった頃には日が傾き始めていた。
“姉さんは夜に予定はあるのか?”
“あぁ、無の大地で共闘中の仲間と攻略の会議だよ。
向こうは時間が違うからね、こちらを出るのは夜の8時頃だ”
“なら先に腹ごしらえをしようぜ。
手伝いをしていたから腹が減ってるだろう”
“それはいいね、空腹で会議をしても頭に入らないし”
話を聞いていると、どうも無の大地では敵との激闘を追体験できるのだという。
それがあまりにも激化しているようで、攻略に時間がかかっているのだとか。
仲間たちは強者ばかりで負けてられないと意気込んでいる姉。
“私は支援に特化しているからね、目立つ貢献がないのもまた特徴だ。
それでも笑って共闘できているのだから、彼らは本当に優しい人達さ”
“そうやって意地を張って変にはしゃぐのもあんただよな”
“まぁね。正直思ったよ、なぜ採用してくれたのかとね。
リーダーが大丈夫と判断してくれたからには頑張っていくさ”
“くれぐれも程々にな”
“ふふ”
そうやって妙に誤魔化しながらディナーを平らげる。
どんな状況でも真剣に、楽しんで、勝利を掴むのも彼女だ。
数日前のマリカの大井戸ではなかなか攻略ができなかったが、彼女と同じように声をかけてみた。作戦も練った。
‘できるじゃないか、よくやった’と。
それは時間のかかるものだけれど、必ず勝利を掴むものであるのを知っていたから。
それを目の前の彼女は何度もやってきていたから。
彼女が利用したのは、超える力ではなく‘諦めない心’なのだ。
“まぁ、死なないようにな”
“善処するさ”
目の前の敵を見て顔つきが変わる。
全員が真剣に、それでも楽しんで挑まなければならない。
諦めなければ、超えられるんだ。
できないわけがない。
かの‘金属の巨人’をだって超えられたのだから、できると信じて。
“それじゃこのやり方で行きましょう!
カウント開始!”
“20!19!18!…”
“……15、14…”
“11、10!……”
“…7、6、5……”
“………3!2!1!”
““Go!!””
私たちは、今回も絶対に超えてやる。
“そういえば、星芒祭の委員の人が俺宛ての手紙を預かってるとか言っていたな…
見に行くか”
そう言って足を運び手紙を読んでみた。
だがこの中身…どう見たって姉宛てだろう。
人を勘違いしたのだろうか、それとも‘光の戦士’故に素性を知らないからなのか。
とにかくこれらは後で姉に渡そう。
“…今年の残りも、平穏だといいな”

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