Extra8:呼び方
家族。
それの価値観や意味合いはそれぞれだが、基本的に血の繋がった者同士で意味を成す言葉だ。
そしてそれは永遠の絆を結んだ者同士でも意味を成す。
血の繋がらないパートナーは、血の繋がったパートナーに兄弟がいると基本的に義兄弟として呼びあったりするだろう。
だが目の前でアップルパイを頬張ってる男…アリスは未だにパートナーの姉であるガウラを義姉と呼んだことはなかった。
「お前はいつになったら、私を義姉さんと呼んでくれるんだい?」
ふと投げかけた言葉に不意をつかれたようで、アリスは腑抜けた声で反応した。
─────
「ヘリオの呼び方はパートナーになって以降変わったのに、私だけ変わらないのは何でだと思ってね」
アリスの反応が面白かったのか、にやりとしながら応えるガウラ。
ヘリオはこのガウラの表情を何度も見ている。
からかっている。
苦笑しながらアリスの方を見てどう答えるのか様子を伺った。
「いや、なんか今更感が凄くて呼べなかったんですけど…、呼んで良いんですか?」
少し恥ずかしそうにそう言うアリス。
「あぁ、呼べ呼べ」
それを聞いて堂々とした表情でいるガウラ。
「じ、じゃぁ…。
ね…義姉さん…」
顔真っ赤で恥ずかしがるアリスを見て、釣られて顔を赤くするガウラ。
ヘリオは若干笑っている。
「お前っ…!呼ぶならもっと堂々と呼びなっ!
こっちまで照れくさくなるだろうっ!?」
「ええーっ!?
だ、だって、改まって呼ぶと…なんか照れくさくてっ!!」
「……くくっ」
「ヘリオ!お前は何笑ってんだいっ!」
「っつ!?」
くつくつと笑っていたヘリオにデコピンを食らわせるガウラ。
「ガ…ッ、義姉さんっ!
ヘリオに八つ当たりしないでくださいっ!!」
「八つ当たりなもんか!!
笑ってるこいつが悪いっ!!」
ヘリオの赤くなった額にケアルをかけながらアリスはギャーギャー騒ぎ始める。
それにまたも釣られて騒ぐガウラ。
ヘリオは2人を宥めながら残りの午後を過ごした。
一見なんの変哲もない日常だが、家族としての絆はまた少し強くなった気がした。
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