Main1-3:語るは誇り
「ガウラ!」
「おや、ナキかい?
まだウルダハにいるのは知っていたけど、何だか久しぶりな気がするよ」
「ウルダハ、広いからね!ナキとガウラの行動範囲が違ってたのかも」
相変わらず、と言った方がいいのか。彼女は楽しそうに話を始めた。
ヴィエラとミコッテの混血児、ナキ・デューン。
容姿はヴィエラに寄っているが身長はさほど高くない。
彼女の言う「白き花」故の白い髪。
ふわふわ女の子との会話が始まった。
─────
「はい、おまちどうさん!クランペットとグレープジュースだよ!」
「ありがとう!」
「ありがとうございます」
「クイックサンドといえば、やっぱり名物クランペットだよー!」
「私も初めて食べた時は驚いたね、こんなにもふわふわパンケーキだとはってね」
ガウラ自身はさほど甘味を多く食べることはないのだが、クランペットはアップルパイを省いて2番目3番目くらい食べる機会が多くなっていた。
不滅隊に移動して拠点がグリダニアではなくウルダハになったから、というのが1番だろう。
だが拠点と言っても行動範囲はエーテライト・プラザ付近やクイックサンド、サファイアアベニュー国際市場くらいだ。
対してナキはルビーロード国際市場やエメラルドアベニュー、コロセウムを行動範囲としている。
踊り子故か場を盛り上げる者として舞をするらしい。
「そういえば、何でグレープジュースなんだい?」
「ナキのおすすめクランペットセットよ!
好みは別れるだろうけど、クランペットとグレープジュースの組み合わせが1番美味しいと思うのよ!」
「なるほど…」
「紅茶が1番だけどね、やっぱりウルダハだから。
値段が違って手がつけられないのよ」
「そうだな、この荒野地帯では茶葉なんて価値が高くなるのは当然か」
「グリダニアやリムサ・ロミンサは茶葉が多くあるから、そこから取り寄せたりするんだって。
グリダニアの方は海を渡らずに輸入できるから、リムサ・ロミンサの茶葉よりは少し安いかな?って程度ね」
「詳しいんだな」
「両親が政庁層で働いていたからね、そこら辺の事情は教えてもらったんだ」
「働いていた…?」
「うん、そこまで上り詰めるのも苦労したけど…いい人生だったと思うなぁ。
パパは不滅隊の剣術士としてギムリト…だったっけ?あそこで戦死しちゃったの」
「…母は?」
「そのすぐ後に病気で。なんだか呆気なかったなぁ」
「……すまない、暗い話を」
「ううん、へーき!
パパ、戦場に出るのを誇りだと言っていたから。
『英雄の進む道を開けられるということは、英雄に勇気を与えること。これは俺の誇りになる!』ってね」
「そうか」
「それに、知ってるよ?ガウラがその英雄だってこと」
「………は?」
マヌケな声だったと思う。
耳を疑った。
確かに英雄と言われるだけあって知名度はあるのかもしれないが、なぜナキが知っている?
「あれ、言ってなかったっけ?
モモディさんから話を聞いて、巡り巡って暁の血盟に入団してるのよ!
でも、ナキの拠点は砂の家になってるよ」
「聞いてない聞いてない!って、モモディさん!?」
ふふふ、と超満面の笑みでこちらに手を振っている受付のモモディ。
いつの間にこんなことになっていたんだ。
「石の家じゃないから知らなかったのか…」
「そうかもしれないね?」
「いや、意外だった…」
「でもナキが英雄を知っている理由、分かったでしょ?」
「あぁ、十分すぎるほど分かったね」
「あ、砂の家の方は安心してね!
ちゃんとお掃除していつも綺麗にしているから!
あそこに残ってるみんなは『いつでも帰ってきてくれ』って言ってるし」
「そうだな、寄る機会があれば行かせてもらうよ」
あ、喋ってたらクランペットもグレープジュースもなくなっていた。
─────
「今日はありがとう!」
「いいや、こちらこそ楽しませてもらったよ」
「っふふ、やっぱりガウラは私の知ってるヘラだね」
「私の本名なんて、知ってるのはもうお前くらいだと思うぞ」
「うっそ、レアなの!?」
「多分な。好きな方で呼んでくれて構わないけど、慣れてしまったかい?」
「それもあるけど、周りや君のエーテルは君のことを『ガウラ・リガン』だと認識しているから。
私だけが『ヘラ・リガン』と言ったら君のエーテルが困惑しちゃうよ?」
「おや、そんなに繊細かい?」
「うん、繊細」
「そうかい」
そんなものなのかなと納得することにした。
だがそうか、あの場に彼女の父もいたんだな。
知っていれば声をかけれただろうに、私は屍を越えて進まねばならないのか。
これだから英雄は、光の戦士は嫌になる。
ただの冒険者としての日々はどこに行ったんだろうな?
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