Main2-7:サベネア、ラヴィリンソス、そして依頼
エーテルの少ない身体だが、テレポは問題なく扱える。
サンクレッドの言う[制御]とは根本的な何かが違うのか、サンクレッドと私の[テレポができない/できる違い]も改めて把握できた。
だが…だが……
「………」
「(有り得ない…!!)」
「…ハァ……」
これほど酷いエーテル酔いは今まで味わったことがあっただろうか?
事の発端はサベネア島に行く方法がテレポしかないということだった。
船で行くことも可能だったろう、だがそれでは現状の問題解決の為となると時間がなく間に合わない。
そこでオールド・シャーレアンでエーテライトの技術開発を行っている施設へ赴いたのだ。
サベネア島に行くチームはサンクレッド、ウリエンジェ、エスティニアン、そしてガウラだった。
エスティニアンは以前1人でサベネアに行ったことがあるらしく、エーテライトの交換は済んでいる。
残りの3人は開発されたエーテライト(後は実証のみ)を使用してサベネアに来たのだが…
「……」
案の定酷いエーテル酔いを起こし、撃沈したのだった。
─────
「エスティニアンは金銭感覚がアレだから……
ひとりで買い出しはさせるな……だそうだ……」
そしてエスティニアンが酔い覚ましに効くというアームララッシーを買いに行ったのだが、サンクレッドの一言のせいで酔ってる中動く羽目になったガウラ。
なんてことだ。
先の言葉を言い残して撃沈したサンクレッドに、サベネアに着いて速攻ぶっ倒れたウリエンジェの2人が動けるはずがなく、辛うじて意識があるガウラが追いかけることになってしまったのだ。
そして言葉通りに金銭感覚が狂ってたエスティニアンをとっ捕まえ定価で買えたアームララッシーは、酔いを覚ます程美味しく感じられたのだった。
「さて、未知の土地に来てすぐにすることは[情報収集]だ。
エスティニアンを追いかける途中で軽く周りを見渡したが、噂に聞いていたような雰囲気を感じなかった」
事前に調べていた環境や文化、ガウラより前に早くここに着き偵察していたヴァルからの情報もあり、状況は把握するのに時間はかからなかった。
道中で知り合ったマトシャや協力者であるニッダーナを筆頭とした錬金術師達の協力の元、そびえ立つ禍々しい塔から出るエーテル放射を防ぐ護符も完成。
だが朗報だけに留まらないのがこの旅路。
護符の効果を試すためにニッダーナと共に塔へ向かったのだが、その際に彼女が塔に取り込まれてしまったのだ。
それは一瞬の油断と隙…隣にいたガウラでさえ間に合わなかった。
護符の効果は問題ないことが分かり、報告のため一行は一旦オールド・シャーレアンへ帰還することにした。
─────
次にシャーレアン議会の調査が始まった。
隠し事も多い上に、協力していると言ったグリーナー達も詳しい事情は知らないと来た。
途中で知り合ったエレンヴィルにラヴィリンソスの下へ降りる方法を教えてもらい、道中で話を聞き込みしつつ真相を探る。
[食料に使える物を中心に集められ納品している]状態のグリーナー。
そんなグリーナー達も多忙故の疲れが目立つ。
だがここでグ・ラハによる失態でシャーレアン議会に見つかり、一行はオールド・シャーレアン内での行動制限を設けられた。
深く関わっていないヘリオでさえ賢学を教えてくれている教授が監視役となるという状況に陥った。
─────
「となると、今すぐに行動できるのはサベネア島の方か。
あちらも急がないとニッダーナさん達を救えなくなってしまう」
「そうね」
「護符があるとはいえ、中がどうなっているのかは把握できない。
ヘリオは言わずもがなだが、アリスも今回はここで待機していてもらうぞ」
「なんでですか!?」
「危 険 だ か ら だ !
……というのもあるけど、別件で頼みたいことがあるのさ」
そう言った後にナップルームでアリスとガウラは合流し、茶を飲みながら話を進める。
「それで、頼みたいことってなんですか?」
「装備を新調したいのだが、素材が手元になくてね。
時短と緊急という理由でお前に頼みたいのさ」
「……?」
「ヴァルが身につけているペンダントのクリスタル…」
「まさか奪ってこいと!?」
「違うわ!
あのクリスタルから、極わずかに魔力と消耗した痕跡が見えたのさ。
ヴァルが常日頃から身につけているペンダントだから、恐らく思い入れがある物だ」
「誰かからの贈り物ですかね?」
「もしそうだとすれば贈り主はヘラだろう。
となれば、ヘリオが記憶を持っている可能性がある。
聞き込んで採集できるかい?」
「…やってみます」
残っていた茶をグイッと飲み干しアリスは答えた。
話を終えガウラは退室し、少し外の空気を吸いに外へ出た。
─────
強大な魔力であればエーテル操作の不得意なガウラでも気づけるが、今回ヴァルのペンダントについているクリスタルから感じ取れたのは[極わずかな魔力と消耗した痕跡]だった。
黒き一族が魔力を扱えないことは承知だが、それでも所詮は人なのだ。
魔力を持っていないわけがなく、そうとなれば媒介さえあれば順応できる。
それはガウラ自身が体験している事だ。
僅かな魔力を感じられたことがガウラの成長した成果ならいいのだが、そうではないだろうと考え直す。
ならば何なのか。
今まで立ててきた仮説を考えると、魔力に枷がつけられていたということになる。
白き一族なのになぜ魔力の方に枷がつくのか…。
「まさか、記憶か?」
ヘリオがヘラの記憶を持ち出したことにより枷がついたとなると、記憶が鍵となるし、ヘリオはそもそもヘラから魔力を奪っていないということになる。
魔力を奪っていない点は、思い当たる節がいくつかあった。
ガウラが何度か魔力を爆発させる時があったことだ。
枷が急に外れたなら、爆発させることも可能だろう。
そして枷が外れるタイミングが決まって[ヘラに関する何かを思い出したか感じたか]の時だった。
「ヘリオが賢学を学んで魔力を増幅させると同時に、私自身も魔力を感じやすくなっている…。
ヘリオが元々私の中の何かだったなら、得たものが共有されていることもおかしくないのか。
エレメンタル・ブーツは遠隔物理ジョブに適した物を用意してもらっているから、どのジョブになっても扱える代物を作るのに早めに頼んだが…見つけられるだろうか」
おかしいくらいに辻褄が合う仮説。
ヘリオの正体がまたもや分からない状態に逆戻りしたが、ガウラの持つ[魔力を扱うことが苦手]という疑問は着々と解決へと向かい始めていた。
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