Main2-12:受け継ぐ
『ガウラ』
「なんだい?ニア」
静まった夜に現れたのは、始祖ニア。
気配に気づいたガウラはそっと彼女の元へ近づいた。
『貴女に、私の魔力を授けたいのです。
貴女はゾディアークとの闘いにて、魔力の扱い方を思い出した。
いつかの儀式により記憶が刺激され、少しずつ思い出していたのです。
思い出したのであれば、きっと私の魔力を受けても問題ないはず。
今の貴女には、アゼムのクリスタルやアルバートの魂があるのだから』
「それをしてどうするつもりだい?」
『どう使うかは自由です。
ただ約束してください、私の力を悔いなく扱うことを』
「分かった」
『それと、私だけが記録している最後の詩を授けます』
「詩?」
首を傾げるガウラ。
ニアは優しい声で話を続けた。
『枷をつけるための詩…あれの効能を消す詩です。
未来で誰かに枷をつけてしまわぬように』
そう言うと、ニアは手をかざし、魔力を与えた。
温かな魔力、優しいその力はガウラの内へと入っていった。
「…痛くない」
『だって私と貴女は同じ血を持つ者だもの。
貴女が受け入れてくれる限り、反発はしないでしょう』
「なるほどな」
『…さぁ、次は詩を受け取って。
これは一族のためであると同時に、貴女への贈り物にもなる詩よ』
進め 例え根のように動けない花であっても
舞い上がれ 例えば愛しき蝶のように
花は枯れゆく 蝶は命燃やす
けれどもそれはあなたのため
未来のために 詩を唱う
止めるものはない
自由に 舞い上がれ
ガウラは静かに聴いた。
その詩を胸に刻むために。
ニアは唱い終えると、満足したように話し始めた。
『ハイデリンのご加護があらんことを。
きっとこの先も貴女は英雄として進むのでしょう。
けれども、隣には必ず人がいることを忘れないで』
「あぁ、忘れないさ。
死んでいった者も、今生きて隣にいてくれる者も、景色も、詩も、忘れない。
英雄という肩書きは望んでいないけどね」
『えぇ、分かっているわ』
そう言うと、ニアは消えていった。
役目を終えたのだろう、その表情は穏やかだった。
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