Extra23:いつか

「遅いですね〜」

「……」

「何かあったのかな?」

「あの2人なら大丈夫だろう」


急にガウラが別行動をすると言い出し、ヴァルを連れて離れた2人。

置いていかれたアリスとヘリオは、暫く2人を待っていた。

心配し始めたアリスは時々トームストーンでガウラにチャットを送っている。

そんな様子を見てヘリオは軽くため息をついた。


「…あんたは、顔を見て話せるな?」

「誰と?」

「俺とだ。

特に戸惑いもなく俺の顔を見て話せているよな?」

「まぁ、ヴィエラになってますますかっこいいなとは思うけど、ヘリオはヘリオだし、顔を見て話せるかな」


そう言ってヘリオを見るアリス。


「そういえば、今日のヴァルさんは義姉さんに対してよそよそしさを感じたなぁ…」

「……」

「ヘリオは原因分かるの?」

「そういう類の感情はあまり理解できないが、原因らしきことで相談されたことならある」

「え!?」


実は以前、ヴァルから話があると言われ相談に乗っていたヘリオ。

要は彼の顔を見ると今まで以上にドキドキしてしまい、顔を合わせることができないとの事だった。

元はと言えばヘラとして生きていたエーテルなら、それに対して何か感情があるのでは?ということで、ヘリオに相談していたのだった。


「一応姉s…兄さんには釘を刺したつもりだったんだが」

「義姉さん、感情豊かだからなぁ」

「まともに目を合わせられなくなってるヴァルも原因だが、それを見て激情している兄さんも大概だな」


そう話しているとガウラからチャットが飛んできた。

『ヴァルを連れて今日はこのまま帰る、すまないね』

それを見せてもらったヘリオは大きくため息をついた。


「俺達も帰るか」

「そうだね、あ」

「ん?」

「そういえばプリンセスデーだなって。

折角だしこのまま執事王さんのところに寄ってから帰ろうよ」

「あぁ、構わない」


そう言って2人はプリンセスデーを楽しむ為に執事王の元へ向かったのだった。


ーーーーー


「わぁ…」

「一言目がそれか」

「いや、かっこよすぎて」

「いつもと変わらないと思うが」

「ミコッテの時もかっこいいけど、ヴィエラでもかっこいいから反則だよなぁ」

「俺には理解し難い」


プリンセスデーの報酬で衣装を貰ったため、早速着合わせてみた2人。

ジャケットの色を白にしたアリス、対して黒にしたヘリオ。

今はミスト・ヴィレッジのハウスに戻ってきており、衣装やプリンセスデーのイベントについて話していた。


「………」

「ヘリオ?」


何か考え込んでいるヘリオ。

キョトンとするアリスに、ヘリオは彼の傍に寄り耳元で囁いた。


「あんたはドキドキするのか?」

「!?」

「俺にはまだよく理解できない感情だ。

ヴァルは同じような顔でも中身が違えば感情も変わると言っていた。

あんたはどうなんだ?

今、俺と兄さんは同じような顔だが、あんたは誰にドキドキする?」

「そりゃぁ、ヘリオかな…。

いくら幻想しても声色や仕草までは変えられない…だからヘリオと義姉さんの区別はつくし、ヘリオの方が俺的にはかっこいいし?」

「…そうか」


そう言うとヘリオはまた考え込む。

ぽけーっとヘリオを見つめるアリスは、そんな彼の仕草を見て『かっこいいな』と呟いた。


「ドキドキは説明が難しいからな…」

「そうらしいな、ヴァルも言っていた」

「まぁでも、いつかヘリオも俺にドキドキを感じてくれたらいいなって思うかな」

「…善処する」


そう言ってヘリオを見つめるアリスの顔は、どことなく赤みを感じた。

いつかヘリオにもこういう感情が芽生えたらいいなと願いながら。

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