Extra21:エターナルリング
「危ない!」
その声と同時に頭の横を魔法が通る。
黒魔道士のブリザジャは太陽の光に反射した。
その眩しさと横切った魔法により目が霞む。
(チカチカする)
その様子を好機とした黒魔道士はソウルレゾナンスを発動し畳み掛ける。
逃げ場を失ったガウラは為す術なく傷を負った。
ここはオンサル・ハカイル。
終節線の行われる場所、無垢の土地を奪い合い、対人が絶えない場所。
そこら中で戦闘が繰り広げられ、誰もが満身創痍である。
自分1人だけが買っても意味がない場所で、今日も誰かが競い合う。
だがそれも終盤、裏をついていた不滅隊がまもなくして決着をつけたのだった。
─────
「いてて…」
「無茶しすぎだ」
「無垢の土地を取ってくれて助かったよ」
「今日はこの後どうするの?」
各々が好きに話したり武器を整えたりする、ウルヴズジェイルではオンサル・ハカイルから帰還した面々がいた。
彼らはここで治療を受けたり訓練したり、報酬を受け取ったりしている。
ガウラもここに帰還したが、連戦続きで体力がない状態だった。
(さっきの黒魔道士に喰らったブリザジャの影響かな…耳鳴りと目眩…)
頭を、耳元を魔法が横切ったのだ、目はチカチカするし耳鳴りもする。
耳鳴りはすぐに収まりそうだが…それに裂傷やら何やらで傷まみれだ。
この場で治してもらってもいいが今すぐ帰って寝たい気分でもある。
そこでふと首にぶら下げていたエターナルリングに目をやる。
(これならすぐに帰れるか)
そう考えた時には彼女の姿はウルヴズジェイルから消えていた。
─────
エーテルの香りがする、それと共に僅かな血の匂いが混ざる。
彼女が帰ってきたことは分かるが、何かあったのかと身構える。
現れたガウラは満身創痍、ヴァルは驚き駆け寄った。
「どうしたんだ、その傷!」
「あー、ウルヴズジェイルで手当するよりここで治した方が後が楽だなと思って…」
「そういえば、今日はオンサル・ハカイルに行くと言っていたな。
すぐ治療する、そこに座っとけ」
「ありがとう」
「痛くないか?大丈夫か?」とずっと話しかけながら手当するヴァルに、ガウラは苦笑いして「大丈夫」だと応える。
「対人、それも歴戦の冒険者が多い中での戦闘だ。
あまり無茶しないでくれ」
「悪い悪い、当たりどころが悪くてね。
目も治ったか」
「目?」
「敵の魔法が太陽に反射したのか、結構眩しくてね。
脳震盪を起こすような当たり方じゃなくてよかったよ」
そう雑談していると、治療も済んだようでヴァルは道具を片付ける。
「ありがとうな」
「気にするな。
…今日はゆっくり休んでくれ」
「あぁ、そうするよ」
そう言って自室に戻ったガウラの背中を見ながら、ヴァルは安心と呆れのため息を吐いた。
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